Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
教室の隅、机に突っ伏してばかりいる少年、悠斗。学校へ行くのはもう、面倒だった。誰も理解してくれない。そんな孤独を癒すのは、睡眠薬だけだった。
毎日、少しずつ増える睡眠薬の量。気づけばそれは、オーバードーズと言えるほどになっていた。今日もまた、彼は睡眠薬を飲み込んだ。
そこにいたのは、見慣れない少女だった。黒縁メガネをかけ、どこか冷たい視線を向けている。
悠斗は自分の耳を疑った。睡眠薬が…擬人化？そんな馬鹿な話があるわけがない。
「馬鹿だと思う？でも、これが現実だよ。」アリスは無表情で答えた。
信じられない気持ちでいっぱいだったが、悠斗の部屋を見回すと、確かにいつもの薬瓶のラベルが少し違っている。そこには、アリスと書かれていた。
こうして、悠斗とアリスの奇妙な共同生活が始まった。
アリスは、悠斗が苦しむ姿を見るのが辛いと言った。彼女は悠斗に、なぜ睡眠薬に頼るようになったのか、話してほしいと頼んだ。
悠斗は、学校でのいじめや、家庭での不和、誰にも理解されない孤独を、アリスに打ち明けた。
アリスは静かに耳を傾け、悠斗の心の傷に寄り添った。そして、彼女自身の過去について、少しずつ語り始めた。
アリスは元々、一人の孤独な研究者によって作られた試作品だった。彼女は人々の心の痛みを癒す力を持つはずだったが、完成される前に研究は打ち切られ、ただの薬として販売されることになった。
「私は、君と同じように孤独だった。」アリスは悲しげに呟いた。
悠斗はアリスの過去を知り、彼女に同情を覚えた。そして、彼女との時間を通して、少しずつ心の傷が癒されていくのを感じていた。
悠斗は慌ててアリスを抱きしめた。「どうすればいい？アリス！
「もう、大丈夫だよ…悠斗…。君が私を必要としてくれなくても、もう、平気…。」
悠斗はアリスを失いたくない。必死に彼女を呼び続けた。
「私は、君の孤独を癒すために生まれた。役目を果たせたなら、それで十分なんだ…。
悠斗は、泣き崩れた。アリスを失った悲しみは、言葉では言い表せないほど大きかった。
しかし、同時に、彼は気づいた。アリスとの出会いを通して、彼は孤独から解放されていたことに。
数日後、悠斗は意を決して学校へ向かった。最初は不安だったが、彼はアリスとの約束を思い出した。
教室に入ると、同級生たちは優しく微笑んで迎えてくれた。彼は恐る恐る席に着き、授業に参加した。
最初は戸惑ったが、少しずつ、彼は学校生活に馴染んでいった。
帰り道、悠斗は空を見上げた。青い空には、白い雲がゆっくりと流れていた。
そして、悠斗は再び笑えるようになった。彼はアリスとの出会いを、決して忘れないだろう。それは、彼にとってかけがえのない宝物となったからだ。
悠斗は、アリスの記憶を胸に、新たな一歩を踏み出した。 恋愛と呼べるものだったかはわからない。でもアリスとの出会いは、悠斗の人生を大きく変えた。
彼は、自分の経験を通して、他の孤独な人々を助けたいと願うようになった。いつか、誰かの心の支えになれるように…。
そして、時が流れ、悠斗は大人になった。彼は心理カウンセラーとして、多くの人々の心に寄り添い、苦しみを和らげる仕事をしている。
ある日、彼は一人の少女と出会った。彼女は、過去の自分と同じように、孤独を抱えていた。
悠斗は、アリスから教わったことを、次の世代へと繋いでいくのだ。それは、彼なりのアリスへの感謝の気持ちだった。
悠斗はこれからも、多くの人々の心に寄り添い、光を与え続けるだろう。彼の心には、アリスの面影が、いつまでも残っているから…。
彼は時折睡眠薬の事を思い出す。乱用するものではない。そう理解している今でもアリスとの出会いは特別な思い出だ。