Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
主人公、湊は、薄暗い自室でため息をついていた。窓の外は鉛色の空に覆われ、まるで湊の心をそのまま映し出しているかのようだった。大学受験に失敗し、アルバイトも長続きせず、将来への希望を全く見出せずにいたのだ。
湊はベッドに倒れ込み、天井を見つめた。スマートフォンを手に取り、SNSを開くが、目に入るのは友人たちの楽しそうな投稿ばかり。自分がまるで世界の隅っこに置き去りにされたような孤独感を覚えた。
そんなある夜、湊は奇妙な夢を見た。気がつくと、見覚えのない場所に立っていたのだ。目の前には広大な草原が広がり、遠くには白い山々が連なっている。空は澄み切った青色で、見たこともないほど美しい光景だった。
戸惑いながらも、湊は草原を歩き始めた。すると、遠くから楽しそうな笑い声が聞こえてきた。声のする方へ向かうと、数人の若者たちが輪になって談笑しているのが見えた。
恐る恐る近づくと、彼らは笑顔で湊に声をかけてきた。「やあ、君も参加する?今日は特別な日なんだ」
湊は訳も分からず、彼らの輪に加わった。彼らは湊を仲間のように迎え入れ、一緒に歌ったり、踊ったり、ゲームをしたりして、楽しい時間を過ごした。湊は、生まれて初めて味わうような幸福感に包まれた。
日が暮れ始め、若者たちはそれぞれの家へと帰っていく。湊も彼らに別れを告げ、草原を後にした。しかし、気がつくと、最初に自分が現れた場所に立っていた。あたりを見回すと、まるで時間が巻き戻ったかのように、またあの白い山々が遠くに見えた。
その時、湊は夢だと気づいた。夢の中で出会った若者たちの顔を思い出し、温かい気持ちになった。そして、彼らにもう一度会いたいという強い思いが込み上げてきた。
次の日、湊は再び眠りについた。そして、またあの草原へとたどり着いた。すると、昨日の若者たちが笑顔で湊を迎えてくれた。「待ってたよ!今日も一緒に楽しもう!」
湊は毎日夢を見るのが楽しみになった。夢の中では、彼は孤独ではなく、仲間たちと笑い合い、楽しい時間を過ごすことができた。現実世界での現実逃避だった。
しかし、ある日、夢の中で異変が起きた。いつも笑顔だった若者たちの顔が、どこか不安げに見えたのだ。「どうしたの?」と湊が尋ねると、彼らは口をそろえて「村が大変なことになっているんだ」と答えた。
話を聞くと、村の聖なる泉が枯れ始め、村全体が衰退し始めているという。原因は不明だが、このままでは村は滅びてしまうかもしれないとのことだった。
湊は、夢の中で自分を受け入れてくれた彼らのために、何かできないかと考えた。そして、自分が現実世界で学んだ知識を活かして、泉の異変の原因を探ることにした。
数日間、湊は若者たちと共に泉の周辺を調べ続けた。すると、泉の近くにある洞窟の奥から、不気味な瘴気が漂ってきているのを発見した。「この瘴気が原因だ!」
しかし、洞窟の奥は非常に危険で、普通の人間では立ち入ることができないという。それでも、湊は諦めなかった。「僕が何とかする!」
湊は、洞窟に入るための方法を考えた。そして、夢の中で得た魔法の知識を応用し、瘴気を打ち消すことができるお守りを作ることにした。数日かけてお守りを作り上げ、湊は若者たちと共に洞窟へと向かった。
洞窟の中は暗く、じめじめとしており、強烈な瘴気が漂っていた。湊は、お守りを手に、慎重に奥へと進んでいく。すると、洞窟の奥に巨大な魔物が現れた。
魔物は恐ろしい形相で湊たちに襲い掛かってきた。若者たちは恐れて逃げ出してしまう。湊は一人、魔物と対峙した。「僕が、みんなを守る!」
湊は、お守りの力を解放し、魔物に向かって突進した。激しい戦いの末、湊は魔物を倒すことに成功した。すると、洞窟の中から瘴気が消え去り、聖なる泉に水が戻り始めた。
村は再び活気を取り戻し、若者たちは湊を英雄として迎え入れた。湊は、夢の中で初めて自分の存在意義を見つけることができたのだ。
しかし、その幸福な時間は長くは続かなかった。ある日、湊が夢から覚めると、現実世界で奇妙なことが起こっていることに気づいたのだ。周囲の景色が、まるで夢の中の風景とそっくりになっているのだ。
混乱する湊は、夢の中の若者たちに助けを求めた。すると、彼らは深刻な表情で「現実世界と夢の世界が混ざり合ってしまっている。このままでは、どちらの世界も滅びてしまう」と告げた。
原因は、湊が夢の中で魔物を倒したことだった。魔物の死によって、現実世界と夢の世界の境界線が曖昧になり、互いの世界に干渉し始めてしまったのだ。
この問題を解決するには、湊が再び夢の世界に入り、魔物の魂を浄化しなければならない。しかし、そのためには、湊自身の心の闇を乗り越える必要があった。
湊は、自分の過去と向き合い、現実世界での苦しみや絶望の原因を突き止めようとした。そして、自分が他人と比較ばかりし、自分の希望を見失っていたことに気づいた。
湊は、夢の中の若者たちが自分を受け入れてくれたように、現実世界でも誰かに必要とされる存在になりたいと強く願った。そして、その強い思いが、彼の心を浄化し、再び夢の世界へと導いた。
夢の世界で、湊は魔物の魂と対峙した。しかし、魔物の魂は、強い憎しみと悲しみに満ちていた。湊は、魔物の魂を浄化するために、自分の心の希望を分け与えようとした。
「君も、きっと苦しかったんだね…でも、もう大丈夫だよ。僕が、君の心の痛みを取り除いてあげる」
湊は、魔物の魂に優しく語りかけ、抱きしめた。すると、魔物の魂は光に包まれ、消滅していった。現実世界と夢の世界の境界線は再び安定し、それぞれの世界は平和を取り戻した。
湊は、夢の世界の若者たちに別れを告げ、現実世界へと帰ってきた。そして、彼は自分の過去を受け入れ、未来への希望を見つけたのだ。
現実世界に戻った湊は、積極的に社会との繋がりを持つように努めた。ボランティア活動に参加したり、新しい趣味を見つけたりすることで、徐々に仲間が増えていった。彼は、夢の中で得た勇気と優しさを胸に、現実世界でも誰かの希望となるべく、一歩ずつ歩み始めたのだ。
そしていつしか、彼はあの日夢で見た景色のように、輝かしい未来を確信するようになっていた。