Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
放課後の教室に響く、どこか遠いチャイムの音。 首を吊った妹の姿が、脳裏に焼き付いて離れない。 あの日の光景が、まるで悪夢のように繰り返される。
私の名前は、彩音。17歳。あの日から、私の世界は色を失った。
いじめが原因だった。妹の咲良は、クラスメイトからの執拗ないじめに耐えかねて、自ら命を絶ったのだ。
警察の捜査は進んだが、いじめの加害者たちは、どこか他人事のような態度だった。証拠不十分、と不起訴になった者もいる。
私は、彼らを許せない。咲良を苦しめた者たちを、絶対に許さない。
そんなある日、私はインターネットの深淵で、ある噂を耳にした。
『見たら確実に鬱になりみな首を吊り戻ってこない闇の動画投稿チャンネルがある』
そのチャンネルの名は、『奈落の底の劇場』。そこで配信される動画は、人間の心の闇を映し出し、視聴者を絶望の淵に突き落とすという。
そして、そのチャンネルを見た者は、後を絶たず自殺していくと囁かれている。
恐ろしい噂だが、同時に、私はそこに、復讐のヒントを見出した。
加害者たちを、絶望の淵に突き落とすことができるかもしれない。
私は、そのチャンネルの従業員になることを決意した。
危険な道だとわかっていた。けれど、私には、それしか方法がないように思えた。
『奈落の底の劇場』の求人広告を見つけ、私はすぐに履歴書を送った。
数日後、面接の連絡が来た。指定された場所は、街外れの古びた倉庫だった。
倉庫の中は、想像以上に暗く、じめじめとしていた。異臭が鼻をつく。
奥に進むと、薄暗い照明の下で、不気味な雰囲気を漂わせた男が待っていた。
男は、にやりと笑った。「君には、アイドルのような役割を期待しているんだ」
『闇のお姉さん』…彼は続ける。「視聴者に、希望の光を見せるんだ。そして、最後に絶望に突き落とす。」
演技、ダンス、歌唱…様々なスキルを習得させられた。
私は次第に、言われたとおりに行動する、操り人形のようになっていった。
数ヶ月後、私は『奈落の底の劇場』で、『闇のお姉さん』としてデビューした。
私の担当は、視聴者からの悩み相談に乗る、というものだった。
笑顔で、優しく、親身になって…私は、完璧な『闇のお姉さん』を演じた。
相談者の心を掴み、希望の光を見せた後、私は、彼らを絶望の淵に突き落とす。
巧妙に仕組まれたシナリオ、心理的な誘導…あらゆる手段を使って、彼らを破滅へと導いた。
視聴者からの反響は大きく、私は瞬く間に人気動画投稿者になった。
しかし、人気が出れば出るほど、私の心は深く闇に沈んでいった。
私は本当に、復讐を果たそうとしているのだろうか…。
自問自答を繰り返す日々。私は、自分が何者なのか、わからなくなっていた。
ある日、私は、加害者の一人である、田中という男が、『奈落の底の劇場』の視聴者になっていることを知った。
私は、田中をターゲットに定め、入念にシナリオを練った。
田中は、私が演じる『闇のお姉さん』に、すっかり心を奪われていた。
私は、微笑みかけた。「田中さん…今日は、あなたに、特別なものを見せてあげます」
「とぼけないでください。あなたは、咲良をいじめた一人です」
田中は、震え出した。「違う…僕は…僕は何もしていない…」
私は、静かに、田中に迫った。「さあ…咲良の気持ちを味わってください」
その瞬間、私は狂気に染まりました。 私は自分のしていることが正しいのか間違っているのか分からなくなっていた…
田中は私が仕掛けた巧妙な罠によって絶望に堕ちていき、自らの犯した罪を悔いながら心を壊していきました…
復讐が終わった後、私は『奈落の底の劇場』を去る決意をしました。
私は、『闇のお姉さん』の仮面を脱ぎ捨て、新しい人生を歩むことにした。
しかし、私の心に刻まれた傷は、決して癒えることはないだろう。
この奈落の底で見た光景は、私の人生を永遠に変えてしまった…
私は今日も空を見上げる。あの時、咲良が見ていた空を…。
私は、あの闇の中に咲いた、一輪の花だったのだろうか。