Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
新入生の蒼太は、俯き加減で入学式へと向かっていた。
幼い頃から数学に魅せられ、その美しさに囚われていた蒼太だが、他人との関わりを極度に恐れていた。
中学時代、親友だと思っていた健太との関係が、依存へと変貌してしまった過去がある。
健太は蒼太を束縛し、彼の時間と心を奪い、ついには見捨てられた。
それ以来、蒼太は誰かを頼ること、そして誰かに頼られることを極度に恐れるようになった。
教室に入ると、ひときわ輝く少女が目に飛び込んできた。
彼女の名前は凛。明るく、誰からも好かれるタイプの女の子だった。
凛は蒼太の隣の席に座ると、屈託のない笑顔で話しかけてきた。
凛は数学が苦手だったが、蒼太の説明を熱心に聞き、すぐに理解した。
その日から、凛は毎日のように蒼太に数学を教わるようになった。
蒼太は戸惑いながらも、凛の純粋な瞳に惹かれていった。
「私、パティシエになりたいんだ。みんなを笑顔にできるお菓子を作りたい。」
その時、蒼太は自分の心の奥底に、小さな光が灯ったのを感じた。
誰かのために、何かをしたい。そう思ったのは、久しぶりのことだった。
学園内で、蒼太と凛の関係を面白おかしく噂する声が聞こえ始めたのだ。
過去のトラウマが蘇り、蒼太は再び心を閉ざし始めた。
そして、気がつくと、彼はカッターナイフを手にしていた。
リストカット。自傷行為を繰り返すことで、彼は心の痛みを紛らわそうとした。
彼女は蒼太を問い詰め、彼の抱える闇を聞き出そうとした。
最初は頑なに拒否していた蒼太だったが、凛の涙ながらの説得に、ついに心を閉ざした。
彼は、過去のトラウマ、そして今の苦しみを、すべて凛に打ち明けた。
「蒼太くんは、一人じゃない。私が、ずっとそばにいるよ。」
蒼太は抵抗することもできず、ただ健太の怒りを受け止めるしかなかった。
「やめてください!蒼太くんに、これ以上酷いことをしないで!」
健太は、蒼太と凛の仲を壊そうと、様々な嫌がらせを始めた。
凛は蒼太を励まし、支え、彼の心の傷を癒やそうとした。
そして、蒼太は、凛の愛情に支えられ、再び立ち上がることを決意した。
彼は、過去のトラウマを乗り越え、凛と共に未来へと進んでいくことを決めたのだ。
過去の傷を抱えながらも、二人は互いを支え合い、成長していく。
そして、いつか、それぞれの夢を実現させることを誓った。
夕焼け空の下、寄り添いながら歩く二人の姿は、希望に満ち溢れていた。
蒼太は決意を新たに数学の研究に励む。依存という過去を乗り越え、凛との恋愛を通して得た心の強さを胸に、彼は一歩ずつ前へと進んでいく。
しかし、過去の自傷の傷跡は、彼が抱える心の闇を物語っていた。完全に過去を断ち切るには、まだ時間がかかるだろう。
だが、凛という光が彼のそばにある限り、彼はきっと乗り越えられると信じている。
あの時、暴力に走ってしまったことを、後悔している。
俺は、もう後戻りできない場所に立ってしまっているのだ。
彼は、グラスを握りしめ、暗闇の中で静かに涙を流した。
それでも蒼太と凛は前に進む。健太の憎しみも、過去の痛みも、全てを乗り越えて、輝かしい未来を切り開いていくと信じて。