Drama
14 to 20 years old
2000 to 5000 words
Japanese
桜舞い散る４月、高校の入学式。人混みが苦手な数学オタクの航太は、隅の方で静かにその時を待っていた。しかし、その静寂は、一人の少女によって破られた。
彼女の名前は、美咲。太陽のような笑顔と、周りを明るくする力を持っていた。航太とは正反対の存在。
最初の出会いは、まるで映画のワンシーンのようだった。美咲は、数学の難問に頭を抱えていた航太に、「教えてくれない？」と声をかけたのだ。それが、二人の依存とも言える関係の始まりだった。
航太は、美咲に数学を教える代わりに、彼女から人との接し方、笑顔の大切さを学んだ。孤独だった航太の世界は、美咲によって鮮やかに彩られていった。
しかし、航太の心には、過去の傷が深く刻まれていた。中学時代、彼は親友の翔太との関係を極度の依存に変えてしまった。その結果、翔太は航太から離れ、航太は人を信じることを恐れるようになったのだ。
「また、同じことを繰り返してしまうのではないか…」
航太は、美咲との関係に恐怖を感じていた。彼女の笑顔に救われる一方で、彼女を失うことへの不安が、常に彼の心を締め付けていた。
美咲もまた、航太に特別な感情を抱いていた。最初はただの数学仲間だった航太は、いつの間にか彼女にとってかけがえのない存在になっていた。しかし、彼の心の奥底にある闇に気づき、どうすれば彼を救えるのか悩んでいた。
美咲は自問自答を繰り返した。航太への感情は、友情を超えた、特別なものだと感じていた。しかし、航太の過去を知っているだけに、自分の感情を伝えることができなかった。
ある日、航太は自傷行為に及んでしまう。過去のトラウマと、美咲への依存、そして彼女を失うことへの恐怖が、彼の心を押し潰したのだ。
美咲は、航太の自傷痕を見つけてしまった。彼女は、航太を強く抱きしめ、「もう一人で悩まないで」と涙ながらに訴えた。
美咲の言葉は、航太の心に深く響いた。彼は、初めて自分の弱さを認め、彼女に全てを打ち明けた。
美咲は、航太の過去を受け止め、彼の心の傷を癒そうと努めた。彼女は、彼に寄り添い、支え続け、少しずつ、彼の心を解きほぐしていった。
二人の関係は、依存から、信頼と愛情へと変わっていった。航太は、美咲の支えによって、過去のトラウマを克服し、再び人を信じることができるようになった。
しかし、過去はそう簡単には消えてくれない。ある日、航太は、翔太と再会してしまう。
翔太は、航太のことを深く恨んでいた。航太の依存によって、彼の人生は大きく狂わされたと感じていたのだ。
翔太は、航太を貶めようと、彼の過去の秘密を暴露し、彼を孤立させようとした。航太は、再び絶望の淵に突き落とされた。
そんな航太を救ったのは、やはり美咲だった。彼女は、航太の過去を受け入れ、彼を信じ続けた。彼女の愛は、航太に再び立ち上がる勇気を与えた。
航太は、美咲と共に、翔太と向き合うことを決意した。彼は、翔太に自分の過ちを謝罪し、許しを求めた。
翔太は、最初は航太を許そうとはしなかった。しかし、美咲の真摯な言葉と、航太の変わりように触れ、少しずつ、彼の心は溶けていった。
最終的に、翔太は航太を許し、二人は再び友情を築き始めた。航太は、過去の過ちから学び、成長することができたのだ。
そして数年後、航太は、美咲と共に、数学者になるという夢を叶えた。彼は、過去のトラウマを克服し、愛する人と共に、新たな人生を歩み始めた。
彼の依存は愛に変わり、暗闇だった人生は、光り輝く未来へと繋がっていた。
あいつがいなくなって、確かに最初はせいせいしたと思った。あの重苦しい依存から解放されたんだから。
でも、時間が経つにつれて、心の奥底にぽっかりと穴が開いたような気がした。あいつの数学に対する情熱、誰にも負けない努力、そして、時折見せる優しい笑顔…。
俺は、あいつのそういう部分が好きだったんだと、今になって気づいた。
もしかしたら、俺があの時、もう少しだけ我慢していれば、あいつはあんな風にはならなかったかもしれない…。
あいつが、美咲さんと共に幸せになっている姿を見るたびに、後悔の念が押し寄せてくる。でも、今さら、何を言っても遅い。
せめて、あいつの幸せを、遠くから見守ることしかできない。
いつか、また、あいつと笑って話せる日が来るのだろうか…。